がん治療中に菜食(ベジタリアン食)をしてもよい?
がん治療を受ける人にとって、菜食(ベジタリアン食)の方が良い、あるいは悪いことを示す科学的なエビデンスはありません。ビーガンやベジタリアンの方は、カロリー不足やたんぱく質不足にならないよう特に注意してください。1
がん治療を受ける人にとって、菜食(ベジタリアン食)の方が良い、あるいは悪いことを示す科学的なエビデンスはありません。ビーガンやベジタリアンの方は、カロリー不足やたんぱく質不足にならないよう特に注意してください。1
菜食には栄養障害のリスクがある?
菜食は、以下のようないくつかの基準を守れば、がん患者さんにとって適切な栄養補給できるものになり得ます。
たんぱく源を見直す - 肉や魚を他のたんぱく源に置き換えます。特定の食品の摂取をやめるだけでは十分ではありません。他の方法としては、特定の食品の摂取量を増やしたり、シリアル、穀類、種子油などで補ったりすることもできます。2
専門家の指導を受ける - 栄養士が毎日のメニューを確認し、患者さんの好みや治療の段階に応じた実践的で健康的なレシピを推奨できるように、定期的に話し合います。1
急な変更はしない - 専門家は、患者さんがこれまで日常的に肉を摂取していた場合、がん治療をきっかけにベジタリアンになるのは得策ではないと考えています。また、逆の場合も同様です。その理由は、化学療法や放射線療法などの治療により味覚や嚥下機能が変化し、それによって新たな食事スタイルに慣れるのがより困難になる可能性があるためです。2
ベジタリアンに特有の栄養ニーズ
ベジタリアンやビーガンの場合、一部の栄養素の摂取量が低くなる傾向があるため、頻繁に確認する必要があります。該当する栄養素は以下のとおりです。
カルシウム - 日本人の食事摂取基準(2025年版)によると、成人における1日のカルシウムの推奨量(mg)は、男性では18~29歳で800、30歳以上で750、女性では18~74歳まで650、75歳以上は600です。3
カルシウムが豊富な食品の例:4
- ヒヨコ豆[乾燥](100 gあたり100 mg)
- にがりとして、硫酸カルシウムを使用した豆腐(100 gあたり150mg)
- アーモンド[乾燥](100 gあたり250 mg)
- イワシ[水煮缶詰](100 gあたり320mg)
- モッツァレラチーズ(100 gあたり330 mg)
- リコッタチーズ(100 gあたり340 mg)
- ルッコラ(100 gあたり170mg)
鉄 -日本人の食事摂取基準(2025年版)によると、成人における1日の鉄の推奨量(mg)は、男性では18~29歳で7.0、30~49歳で7.5、50~74歳で7.0、75歳以上で6.5です。女性(月経あり)では18~29歳まで7.0、30~64歳で7.5、女性(月経なし)では65~74歳で6.0、75歳以上は5.5です。妊娠初期は2.5、中期・後期は8.5、授乳期は2.0を付加することが推奨されています。3
鉄が豊富な食品の例:4
- ヒマワリの種(100 gあたり3.6 mg)
- キヌア(100 gあたり4.3 mg)
- カシューナッツ(100 gあたり4.8 mg)
- ゴマ(100 gあたり9.9mg)
- レンズ豆[乾燥](100 gあたり9.0 mg)
- ヒヨコ豆[乾燥](100 gあたり2.6mg)
ビタミンB12 - 日本人の食事摂取基準(2025年版)によると、成人の1日あたりの推奨量は男女ともに4.0μgです。3ビタミンB12は、主に動物性食品(肉、魚、卵、乳製品など)に含まれる栄養素です。必要性については医師や栄養士にご相談ください。5
がん治療を受けるベジタリアン向けの栄養価の高い食事
治療中は、腫瘍の代謝活性や薬・処置の副作用によって生じ得る筋肉量の減少を予防・回復するため、エネルギーとたんぱく質摂取量を増やす必要がある場合があります。さらに、化学療法や放射線療法を受けた患者さんでは、口の渇き(ドライマウス)、口内炎(アフタ)、嚥下困難、食欲不振、吐き気といった副作用が起こることがあります。そのため、高カロリーで飲み込みやすく、食感のよい食品が推奨されます。
- 食材ごとに自分の好みの食感になるように別々に調理しましょう。例えば、ニンジンの千切り、カボチャのマッシュ、小さく角切りにした豆腐などです。
- マッシュした野菜や豆をだし汁やスープ、またはサラダに加えることで、栄養価をアップしましょう。ヨーグルトやトーストに果物を乗せてもよいでしょう。
- 水を加えるだけでできるビーガン用のインスタントプディングミックスがありますが、水の代わりに豆乳やアーモンドミルクを使って作りましょう。
- フレッシュジュースやスムージーに、シリアル、豆腐、豆乳、アーモンドミルクを加え、アップグレードする習慣をつけましょう。
- フムス(ヒヨコ豆のペースト)は栄養価が高く、たんぱく質や鉄が豊富に含まれています。フムスはスプレッドとして使用したり、焼き豆腐やテンペ(ベジタリアン料理によく使われる大豆の発酵食品)に添えたりすることができます。
- 豆乳ヨーグルトは、果物、ナッツ、シリアル、ココナッツミルク、ピーナッツバターと一緒に食べるとよいでしょう。
食事を変更する前に、必ずかかりつけの医師や栄養士にご相談ください。
引用文献・参考
1 - World Cancer Research Fund :“Can a vegan diet inhibit cancer growth?”. https://www.wcrf.org/living-well/living-with-cancer/can-a-vegan-diet-inhibit-cancer-growth/ [2025年5月閲覧]
2 - The vegetarian resource group. Selecting Menus for Vegan Cancer Patients. https://www.vrg.org/journal/vj2009issue3/2009_issue3_vegan_cancer_patients.php[2025年5月閲覧]
3 – 厚生労働省:「日本人の食事摂取基準(2025年版)」策定検討会報告書
https://www.mhlw.go.jp/content/10904750/001316585.pdf
4 – 農林水産省:日本食品標準成分表(八訂)増補2023年
5- 文部科学省:食品データベース https://fooddb.mext.go.jp/ranking/ranking.html
他の記事も読む
がんの副作用を軽減するための補完代替医療
がん、アレルギー疾患、精神疾患のように、食事・運動などの生活習慣やストレスなどの社会環境など、さまざまな複合要因によって起こり得る疾患については、必ずしも容易に克服できない状況が生じることが多く、西洋医学だけではなく、健康食品、ヨガ、マッサージなどの各種民間療法が広く患者に利用されているという実態があります。これら各種の施術・療法を含む医学・医療体系が「補完医療(ほかんいりょう)」と総称されます。
がん治療に多職種チームで取り組むことのメリット
がんとは、100以上の病気の総称であり、がん細胞の元となった細胞の種類、遺伝的な違い、体への影響度などの点で異なります。
がんの治療中に必要となる日常生活の変更
治療中は、医師の診察や処置を受けたり、副作用が起こったりするため、当然のことながら日常生活に変化が生じます。しかし、だからといって普段の活動をすべてやめなければならないわけではありません。がん治療をスケジュールに組み込み、生活の質を高める方法を学びましょう。
がん治療に向けた準備
治療中は、身体的な変化や心理的な変化に加え、日常生活にもいくつかの変化が生じる可能性があります。この期間を乗り越える上で、生活の質向上に役立つ情報を以下にご紹介しますのでチェックしてみましょう。
放射線療法
放射線療法は、悪性腫瘍を含むいくつかの病気に対する重要な治療法です。がん症例の約60%では、有効性を確保するためや、病気による症状を緩和するために、少なくとも治療のいずれかの段階で放射線療法が必要になります。
がんとの闘いに重要な役割を果たすビタミン・ミネラル
多くのビタミンやミネラルは、治療を受ける人の健康にとって重要です。