がんサバイバーシップ:段階、統計、ケア
治療と早期発見の進歩により、近年、がんサバイバーの数は大幅に増加しました。2022年時点では5年生存しているがんサバイバーは日本には341万人いるとされています13。
治療と早期発見の進歩により、近年、がんサバイバーの数は大幅に増加しました。2022年時点では5年生存しているがんサバイバーは日本には341万人いるとされています13。
がんサバイバーとは、"survivor"との語感よりがんに打ち克った人を指すと受け取られがちですが 、現在は、「がんが治癒した人だけを意味するのではなく、がんの診断を受けた時から死を迎えるまでの全ての段階にある人」と定義されています。14
この記事では、がんサバイバーシップとは何か、そしてがんサバイバーシップは患者さんや患者さんの長期的な健康にとってどのような意味があるかを見ていきます。また、回復への道を歩む上で役立つ支援についても取り上げます。
がんサバイバーシップとは?
「がんサバイバーシップ」が何を意味するかは人によって異なりますが、大まかに言って「がんサバイバーシップ」とは、患者さんが診断を受けた時点から始まり、治療期間全体およびその先までを含む道のりを指します。
「がんサバイバーシップ」という言葉が力となる方がいる一方、この言葉を使うのを好まない方もいます。「がんサバイバーシップ」はごく主観的な言葉であり、人によってはがんに自分の人生を決められたくないと感じることもあります。そうした方の中には、自分の健康状態がアイデンティティにおいて大きな位置を占めることを望まないという方もいるかもしれませんし、すでに長い間がんとともに生きてきたため、「サバイバー」という言葉がしっくりこないという方もいるかもしれません。
がんやがん治療の体験は1人ひとり異なります。健康が回復して治療が終わりを迎えても、たくさんの新たな感情が現れたり情緒が不安定になったりすることがあります。
がんサバイバーは、以下のようなことを感じる場合があります2:
- がん治療後の生活への不安
- 自己受容感の向上
- 生きていることに対する新たな感謝
- 健康全般に関する不安の増大
- 経済的な不安
- 仕事や人間関係の変化への対応の難しさ
がんの共同サバイバー
これまでに、「がんの共同サバイバー(cancer co-survivor)」という言葉を耳にしたことがあるかもしれません。これは、パートナー、お子さん、友人、その他の家族など、患者さんががん治療を受けるのを支援する身近な人を指す言葉です。
「共同サバイバー」という言葉は、がんが患者さん本人の人生に及ぼす影響だけでなく、周りの友人や家族との関係に及ぼす影響についても考慮しています。
がんの生存率に関する統計
がんの生存率は、がんの種類だけでなく、年齢などの個人的な要因によっても大きく変わってきます。
2009~2011年にがんと診断された人の5年相対生存率は男女計で64.1 %(男性62.0 %、女性66.9 %)です14。また、2023年のデータに基づくと、日本人ががんで死亡する確率は、男性24.7%(4人に1人)、女性17.2%(6人に1人)です14。
この差は、男性がなるがんと女性がなるがんの種類が一因となっています。例えば、女性がなるがんには子宮頸がんや乳がんがありますが、これらのがんは定期健診で早期診断されることが多くなっています4。
がんの5年相対生存率は、年々伸びてきています。中には完治が期待できるがんもありますし、治療をしながらがんと共に生きることが可能にもなってきています14。
がんとともに生きる
がんと診断されてからの日々は、動揺して混乱したり、ストレスを感じたり、不安になったりすることがあります。これはまったく普通のことであり、そうする中でがんとともに生きることを学び、回復することを中心とした新たな日常に合わせて生活やスケジュールを調整していくのです。
がんの種類や診断時のステージ(病期)によって、治療には以下のいずれか1つを使用する場合や、複数を併用する場合があります5:
- 手術
- 化学療法
- 放射線療法
- 薬物療法
がん自体ではなく、がん治療の副作用に対処するために、追加の薬の使用が必要になることもあります。例えば、化学療法では食欲不振になることがあり、そのために追加の薬を使用したり、必要な栄養を取るために高カロリーのサプリメント で栄養摂取を調整したりする必要が生じることがあります。
化学療法、放射線療法、および特定の薬による治療では、しっかり食事を取って活動的な生活を維持することが難しくなる場合があります6。そのため、この期間中は安静にし、健康を維持する最善の方法について医師のアドバイスに従うことが重要です。
健康な食生活の維持に苦労されている場合は、がんの栄養摂取に関する当サイトで、できるだけ健康でいるためには何を食べたらよいか、どのような対策をしたらよいか、最新の役立つヒントやコツを紹介していますので是非ご覧ください。
がん治療後の生活
治療が終わった後も、体調が優れないことや、不安を感じることがあります。がんが再発するのではないかと不安になったり、化学療法や放射線療法の副作用が続いていたりすることもあります。この移行期には、体力を回復し、心と体の健康を取り戻すことが役立ちます7。
がんになったときや治療中の健康維持に関する詳細については、食事と栄養に関する以下の記事をご覧ください:
- 栄養と食事を武器にがんと闘う
- がん患者さんにとって健康的な食事
- 乳がんに適した食事
- 肺がんにおける食事と栄養摂取に関するヒント
- 前立腺がんと闘う患者さんのための食事に関するヒント
がんの再発リスクは、がんの種類や治療に対する体の反応によって変わってきます8。
医師は各患者さんのリスクレベルについて説明し、将来に関する懸念や今後の見通しへの不安を軽減します。また、多くの場合、定期健診のスケジュールを組み、がんが休眠状態(がん細胞が活動していない状態で存在するが、増殖はしていない状態)9 または完全寛解(必ずしも完治してはいないが、がんが消失した状態)10に維持されていることを確認します。
がんを超えて生きる
長期にわたるがんサバイバーシップには、特有の問題があります。多くのがんサバイバーは、普段の生活に戻り、仕事に復帰して、日課としていることや社会生活を再開します。しかし、身体的、心理的、経済的な問題に直面することもあります。
また、健康を最優先に考え、今後がんやその他の病気になるリスクを最小限に抑えるために、生活習慣を見直すこともあるかもしれません。がんとの闘いの後に健康的な生活習慣を維持するにはどうすればよいか、役立つヒントを以下にご紹介します。
がんサバイバーとして健康を維持する方法
がんサバイバーシップの各段階で、心と体の健康を維持するためにできることはたくさんあります。例えば:
- バランスの取れた健康的な食事を取る。
- 日々の生活に決まった動作や運動を多く取り入れ、活動的な生活を取り戻す。
- 定期健診をスケジュールどおりに受ける。
- 人間関係と心の健康を優先する。
- サバイバーシップケアプランを作成する。
がんサバイバーシップケアプラン
がんサバイバーシップケアプランは、がん治療後の健康維持をしやすくするのに役立ちます12。ケアプランには以下のようなものが含まれます:
- 診療記録:医師やケアチームから、診断、治療、および各段階の治療結果の記録を提供してもらうことができます。後で確認する必要が生じた場合に備え、これらの記録をまとめて大切に保管しておきましょう。
- 経過観察のスケジュール:これらの診察は、がんが寛解状態に維持されており、治療による長期的な副作用が生じていないことを確認することを目的としています。
- 健康とウェルビーイングを向上するためのアイディア:ケアプランでは、体力を回復して体調改善を早めるため、栄養士と相談して科学に基づく食事・運動計画を作成することを提案することもできます。
がんサバイバーシップケアプランについては、かかりつけの医師に一緒に検討してもらえるか相談し、わからないことがあれば必ず質問するようにしましょう。
参考:
1 - NCI Statistics and Graphs https://cancercontrol.cancer.gov/ocs/statistics
2 - NCI Feelings and Cancer https://www.cancer.gov/about-cancer/coping/feelings
3 - NCI Cancer Statistics https://www.cancer.gov/about-cancer/understanding/statistics
4 - Early Detection of Breast, Cervical, Ovarian and Endometrial Cancers in Low Resource Countries: An Integrated Approach https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC3272175/
5 - Cancer Treatment Types https://www.webmd.com/cancer/ss/slideshow-cancer-treatments
6 - Stephanie Barrera, M.S., R.D. & Wendy Demark-Wahnefried, PhD., R.D (2010). Nutrition During and After Cancer Therapy. https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC2770876/
7 - R. Segal, MD et al (2017). Exercise for people with cancer: a systematic review. https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC5576469/
8 - Cancer Recurrence Statistics https://www.cancertherapyadvisor.com/home/tools/fact-sheets/cancer-recurrence-statistics/
9 - Aguirre-Ghiso, Julio A. (2007). Models, mechanisms and clinical evidence for cancer dormancy. https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/17957189/
10 - Remission: What Does It Mean? https://www.webmd.com/cancer/remission-what-does-it-mean
11 - Michelle J. Naughton, PhD, MPH & Kathryn E. Weaver, PhD, MPH, (2015). Physical and Mental Health Among Cancer Survivors. https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC4503227/
12 - ASCO Cancer Treatment and Survivorship Care Plans. https://www.cancer.org/treatment/survivorship-during-and-after-treatment/long-term-health-concerns/survivorship-care-plans.html
13-国立研究開発法人国立がん研究センター「生活習慣とがんサバイバーの生活の質や予後との関連を調査」
14-国立がん研究センターがん情報サービス「がん登録・統計」
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